「それって遥翔さんが死んじゃうって事ですか、見捨てるって事ですか? やだっそんなの嫌です。もう絶対に治らないんですか?」

「勘違いしないで、決して遥翔を見捨てる訳ではないわ。これは遥翔の為でもあるの、このまま治療を続けても遥翔は辛いだけなのよ。だったらせめて治療の辛さや病気の苦しみから解放してあげようって事なの」

その後しばしの静寂の後、杏奈は静かに口を開いた。

「ほんとにもう遥翔さんは治らないんですか?」

「出来る治療はすべてやりつくしたそうよ」 

そういう岩崎の瞳からもあまりの辛さに涙があふれていた。

「だったら最後にお願いがあります!」

「なに? 言ってごらんなさい」

「遥翔さんと結婚させて下さい!」

杏奈のとんでもない発言に度肝を抜かれた岩崎は声を荒らげながら反対する。

「なに言っているの、悔しいけど遥翔はもうすぐこの世からいなくなってしまうのよ、許せるわけないでしょ!」

それでも引き下がろうとしない杏奈。