その後遥翔はニコッと微笑みやさしく語りかける。

「帰ろうか、もう暗くなるし送るよ」

「はいっ、ありがとうございます」

「礼なんて良いって、付き合ってもらったのはこっちなんだし当然の事だよ。行こっ」

二人は夕陽の沈んだ海を背に杏奈の家に向け歩き出すと、彼らの目の前には夜の闇に浮かぶ月が一段と輝きを増そうとしており、そんな中杏奈を無事に家まで送り届けた遥翔。

「送っていただいてありがとうございます」

「こっちこそありがとな。それと色々付き合わせちまってごめん、すっかり暗くなっちまったな。家の人に怒られないか?」

「大丈夫です、心配ありません。それより遥翔さんも気を付けてくださいね、都会と違って街灯や街明かりがないのですごく暗いですから」

「心配いらないよ、それにこの月明かりだけで充分じゃない? この方が風情あるしね」

夜空を見上げながら言う遥翔、そこへ杏奈が問い掛ける。

「明日には帰るんですよね」

「あぁそのつもりだ、さっき杏奈ちゃんに言われちゃったからな。それにいつまでもわがままやってらんないし」

「何時の船ですか?」

「朝一番の便で出るつもりだ」

「じゃあその頃港に見送りに行っていいですか?」

「あぁ良いとも、来てくれたらうれしいよ」

その声とともにニコッと微笑む遥翔。