「それはそちら側の都合じゃないんですか?」

「確かに治療のしやすさ一点だけを見るとこちらの都合かもしれません。ですがそのほかの点を考えると隠すことが難しいんです。それに患者さん自身も自分がどんな病気か分かっていた方が治療に対するモチベーションも上がると思うんですよ。最近の医学ではガンと言っても決して治らない病気ではありません、ですから最近では告知するのが普通なんです。確かに最初はショックを受けるかもしれません。ですが自分の本当の病気を知る事できちんとこの病気と向き合う事が出来ると思います」

「そういう事ですか、先生のお考えは分かりました、確かに足を切断してしまっては隠しようがないですものね。でもせめて告知の段階では事前に相談して頂きたかったです」

「そうですね、こちらも配慮が足らなかったかもしれません。申し訳ありませんでした。今後はそのように致します」

五十嵐が病室に戻ると遥翔はベッドの上で布団を深くかぶり横になっていた。

病室のドアの開く音が聞こえ五十嵐が戻って来た事に気付いた遥翔は、ベッドにふさぎ込みながら五十嵐に問い掛ける。