このような言い方をする渡辺医師に遥翔は嫌な予感を感じており、そんな遥翔にさらに続ける渡辺医師。

「実は先日行った定期検査の中で肺に影が見つかりまして、非常に残念ですが恐らく転移かと思われます」

このまさかの言葉を耳にした遥翔は目の前が真っ暗になる思いになった。

「うそだろ、足を切断までしたのに転移ってそりゃないだろ。俺颯太みたいに死ぬのか? どうなんだよ先生、やだよ助けてくれよ!」

激しい口調で渡辺医師に詰め寄る遥翔。それに対し渡辺医師はやさしい語り口で遥翔をなだめる。

「落ち着いて遥翔さん、遥翔さんの命は必ず助けるから。だから一緒にこの病気と闘っていきましょう」

渡辺医師の慰めの言葉にもかかわらず遥翔の興奮は未だ収まる事はなかった。

「颯太の両親にもそう言ったんだろ、それなのに颯太だって結局助けられなかったじゃないか!」

「そんな事ないよ、君の場合はまだ希望はある。早速週明けからにでも抗がん剤治療を始めよう、それと組み合わせて放射線治療も始める」

「それじゃあ退院はどうなるんだよ、せっかく僅かだけど歩けるようになってきたのに。先生歩けるようになったら退院できるって言ったじゃねえか」