「これですか颯太が言っていた月の写真と言うのは、確かに美しいですね。颯太もいつも大事そうに写真を眺めていました」

颯太の父親は壁に貼ってある淡く輝く美しい月の写真を眺めながら静かな語り口で言うが、その表情はどこか悲しみを帯びていた。

「分かりますか、僕はこの淡く輝く月が他のどんな月よりも好きなんです。なんか儚い感じが良いんですよね」

「儚いか、確かに命とは儚いものですね」

「お父さん?」

次の瞬間颯太の父親の口から放たれた言葉は涙をこらえながらのあまりにも悲しい一言だった。

「遥翔さん今まで颯太と仲良くして頂いてありがとうございました。残念ながら颯太はもうこちらにはこられなくなりました。申し訳ありません」

「なんですかその言い方過去形じゃないですか。あっ分かった退院ですか? それならよかった。謝らなくていいんですよ、めでたい事じゃないですか。では颯太に言っておいてください退院おめでとうって」

「いえ、残念ながらそうではないんです」

「ではなんなんです?」

この時遥翔の中に嫌な予感が走った。