「なんだよ、さっき来たばかりじゃないか」

「ごめんなさい遥翔さん、仕事の合間に抜けて来たからあまり時間がないのよ」

「そうかいつも悪いな。あまり忙しかったら無理に来なくても良いんだからな」

「分かった、でも大丈夫だから気にしないで。じゃあもう行きますね、どうか元気でね」

そう言って杏奈は病院を後にした。

ところが数日後、杏奈と共に颯太の病室を訪ねようとしていたその日の朝、遥翔の病室の扉をノックする音が聞こえた。

「はいどうぞ!」

そこへ現れたのは予想外の人物だった。

「颯太君のお父さんじゃないですかおはようございます。どうしました今日は、ちょうど今日颯太君の病室に伺おうと思っていたんですよ。どうぞ入ってください颯太君元気ですか?」

遥翔に促され病室に入った父親であったが、ところが颯太の父親はうつむいたままなかなか口を開こうとしなかった。

「おとうさんどうかしましたか?」

その後壁一面に張ってある月の写真を目にした颯太の父親は悲しみをこらえながらようやく言葉を絞り出す。