「ありがとう、わあほんときれいなお月さまだな? はいこれ返すね、ありがとうお姉ちゃん」

「どういたしまして」

返事とともに颯太から写真を受け取った杏奈に対し遥翔が問いかける。

「だけどそこまでしなくてもいいのに、カメラ代払うよ、いくらかかったんだ?」

「良いですよあたしが勝手に買ったんですから。それに言ったでしょ、あたしも撮っていて楽しいのよ、だからカメラを買ったのは自分の為でもあるの」

この時遥翔の心に一つの疑問が生じた。

「そうか? なんか悪いな、ところで今まではどうやって撮っていたんだ?」

「今まで? これもネットで調べたんだけど天体望遠鏡の接眼レンズの所にデジカメを固定するアダプターがあってそれを買って付けて撮っていたの。この時のデジカメって言うのはコンパクトカメラの事だけどそれは前から持っていたのを使ったから安心して」

「それは分かったけど、でもアダプターも買っていたのか。やっぱり金払うよ」

「だから良いですって」

「そうか? 何だか余計な金出させちゃったみたいだな、何か悪い事しちゃったよ」

「そんな悪いだなんて、ほんとにあたしが勝手にやったことですから良いですって」

「ありがとな杏奈」

杏奈は写真を貼り終えると残しておいた最後の一枚を颯太に差し出した。