そして辛く長いリハビリを続けていたある日、遂に感動の日を迎えた遥翔。

いつものように黙々とリハビリを続けているとそれまで動く事の無かった右足が僅かに動いたのだ。

「えっ動いた、佐藤さん足が動いたよ」

「やったな! おめでとう」

「ありがとう、これも佐藤さんのおかげだよ」

「そんな事ない、遥翔君ががんばったからだよ。この調子でこれからもがんばろうな」

「うん、がんばるよ僕」

そしてこの日のリハビリが終わり病室に帰ると、そこには杏奈が来ていた。

「杏奈来ていたのか」

「仕事終わって今きたとこ、リハビリ終わる頃だったからこっちで待たせてもらったの」

「そっか、じゃあリハビリテーションルームまで来てくれたらよかったのに」

「どうしたの、何かあった?」

「ちょっとな」

この時遥翔の顔は喜びを隠しきれないほど朗らかな表情をしていたので、杏奈は悪い事ではないなと確信していた。

「なぁに良い事?」

「あぁ良い事、動いたんだ」

「何が?」

「足だよ、自分ひとりの力で動かす事が出来たんだ。ほんの僅かだけどな」

その報告を聞いた杏奈は自分の事のように喜びをかみしめていた。