「なんだよそれ、どうしたんだ?」

「遥翔さんこの月好きって言っていたでしょ、遥翔さんの部屋に入って望遠鏡とデジカメで撮ってきたの。勝手に望遠鏡借りちゃってごめんね」

「そんな事はどうでも良いよ、でもよくこんな写真撮れたな」

「うん、望遠鏡にはちゃんとカメラを付けられるようにしてね、前から調べてたんだぁ、あたし勉強したんだから」

「ありがとな、うれしいよ」

「これからも時間があったらいろんな表情の月を撮って来るからね」

「ありがとう、楽しみに待っているよ」

「だからリハビリ頑張って」

この一言にそれまで明るかった遥翔の表情が即座に落ち込んでしまった。

「お前もしかして聞いたのか?」

「五十嵐さんにね、逃げ出したくなるのも分かる、でも自分の事なんだから駄目だよ。大丈夫、リハビリ続けていたらいつか歩けるようになるから、だからがんばって」

「ありがとう、こんな所でへこたれていちゃダメだよな、がんばるよ」

杏奈の励ましに遥翔は翌日から精力的にリハビリに取り組むようになった。