そんなある日一向に動く事の無い自分の足に苛立ちを感じていた遥翔。

「あぁ全然動かねえじゃねえか、やめたやめた、リハビリなんてしたってもう俺の足は動かねえんだよ」

遥翔がイラついていると、この日付添いに来ていた五十嵐が一生懸命励ます。

「何言ってんの遥翔、頑張って歩けるようになるんでしょ! こんな姿杏奈ちゃんに見せられないわよ」

「でも俺の足ちっとも動こうとしないんだぜ」

そこへ佐藤ががっかりした様子で声をかけてくる。

「今日はこの辺にしよう、本人にやる気がないんじゃどれだけやっても無駄だ」

翌日杏奈が見舞いにやって来ると、遥翔に対しやさしく声をかける。

「遥翔さんこんにちは、どう様子は?」

「ああ杏奈か、また来てくれたんだな? いつもありがとな」

「今日は遥翔さんにいい物持ってきたの」

「なんだよいい物って」

「何でしょう? 今出すから待っていてね」

杏奈はバックから数枚の紙を取り出し壁に張っていく。

その紙とは遥翔が好きだと言っていた青空に浮かぶあの月の写真だった。