浜辺に腰を下ろす二人。

「ここ良いでしょ、あたしのお気に入りの場所なの。すっごく夕陽がきれいにみえるんだから」

自慢げに話す杏奈であったが、遥翔の口からは思わぬ言葉が返ってきた。

「へぇ、確かに良い所だね。でも僕は夕陽も良いけど青空に白く見えるうっすらとした月が好きなんだ。なんか淡く輝く月が儚げで幻想的に見えていいんだよなぁ?」

「青空って事は昼間に見えるの?」

「そうだよ、すごくきれいなんだから。杏奈も見た事ない?」

(昼間の月ってどんなんだろう、遥翔が言うんだからきっとすごくきれいなんだろうな?)

そんなふうに思った杏奈はそれをそのまま訪ねてみる。

「昼間の月なんて気にして見た事ないなぁ、まだこんなに明るいのに月なんて見えるの?」

「見えるよ、今日みたいによく晴れた日なら見えるんじゃないかな?」

遥翔は東の空へ目を向け月を探し始めた。

「あっ見えた、ほらちょうどあんな感じ。杏奈ちゃん見える?」

そこにはうっすら白く透き通るような月が儚げに輝きながら青空にふわりと浮かんでいた。

「なんか淡くて儚げできれいだろ?」

その儚げにうつる淡い月に杏奈はあまりの美しさに感激してしまった。