「それはもちろん分かっています。大丈夫です、そんな容易く諦めたりしませんから」

「それなら良いんだけど、ちなみに参考までに僕が住んでいる部屋の家賃いくらか知りたい？」

「いくら位なんですか？」

そしてなぜか他に誰もいないのに杏奈に耳打ちする遥翔。この時家賃の額を聞いた杏奈はその思わぬ安さに驚いてしまった。

「えっそんなもんなんですか？　遥翔さんが住んでいる家だからもっと高い高級マンションにでも住んでいるのかと思った」

「だから言ったろそれほど高くないって、僕の住んでいるマンションは東京でも家賃の安い地域にあるんだけど、その中でもさらに安いマンションなんだよ。元々僕は住む家にはこだわらないんだ。それに僕はあまり贅沢するのは好きじゃないしね。だからデビューしてから一度だけ今の家に引っ越したけどそれからずっとそこに住んでいる。その頃はまだあまり売れてなかったからそれ程家賃の高い所には住めなくて今のマンションに決まったんだけど、でも今の所結構気に入っているんだ」

「そうなんですか、でもそのくらいならあたしでも払えるかな？」

「今度家賃いくら位か調べておいてあげるよ」　

杏奈は遥翔の申し出にもしかしたら遥翔と同じマンションに住むことができるかもしれないと嬉しくなっていた。