畑中の言葉に精いっぱいの笑顔を浮かべる杏奈。しかし依然杏奈のストーカーへの恐怖は拭い切れていなかった。

「そう? ならいいんだけど。でも寝不足のまま仕事に来られても困るのよ、やっぱり明日の仕事はキャンセルしようか?」

それでも責任感の強い杏奈は翌日の仕事を休もうとはしなかった。

「キャンセルするにしても今からじゃ明日の朝にならないと無理ですよね、とにかく横になってみます」

「分かったわ、じゃああたしはこれで帰るから、明日の朝迎えに来るね、ケータイだけは繋がるようにしておいてね」

心配な思いを抱きながらも畑中はその部屋を後にした。畑中はその後すぐに社長の岩崎に連絡をし、今回の事件とその後どのように対応したかを報告する。

「社長夜分に申し訳ありません」

『良いのよ、それより何かあった?』

「杏奈の事なんですがちょっとまずい事になりまして」

その言葉を聞いた岩崎は一体何事かと不安な気持ちにさいなまれていた。

『杏奈がどうしたの?』

「実はストーカーの被害にあってしまったようで、杏奈の留守中何者かに部屋に侵入されたそうです」