「この仕事辞めたくなった?」

「いえそんな事はありません。数少ないファンとはいえ一部の心無いファンのために他の多くのファンの方々をがっかりさせたくありませんから」

そこには運転しながらもホッとする畑中の姿があった。

「ならよかった。実は辞めたいって言いだすんじゃないかってひやひやしていたのよ」

「安心してください、この位でやめたりなんかしませんから」

「そう言ってくれると助かるわ」

その後無事ホテルに到着しチェックインを終えた杏奈は、畑中と共に従業員により客室に案内される。

部屋に入ると畑中は翌日の仕事の確認を始めた。

「杏奈こんな時に悪いけど明日の仕事大丈夫、 朝七時に迎えに来る予定だけど」

「大丈夫です、この位の事でへこたれていられません。それに何かやっていないと恐怖が甦ってきそうで」

杏奈の返事に安心しつつも、畑中は本当に杏奈の仕事に影響がないか心配でならなかった。

「そう、でも今晩眠れる? あなた未成年だから寝酒を飲むわけにもいかないし、睡眠薬って言うのもねぇ……」

「怖くて眠れる気がしないけど頑張って寝てみます。大丈夫ですって、明日の朝にはちゃんと起きますから」