入学試験は息が凍る頃だった。
だから、それがなんの木なのかは花咲く季節になってから知ったこと。
試験の日は在校生の姿はなく、緊張感が空気にも伝わっているみたいだった。
試験会場の教室はおろか、玄関、学校周りの公道さえ静かで、それが受験生の緊張をさらに煽る。
学区内の中学に通っていた私は、電車に乗ることすらまだ日常ではなく、たどり着いた学校では仲間なのか敵なのか判別不明な目的を同じくした受験生たちが試験会場に無事にたどり着いた安堵と、これからの本番(試験)に向けてピリピリとした雰囲気を出していた。
ご多分に漏れず、私もしっかり緊張はしたものの今持ちうる力は発揮できたと自分に言い聞かせることができる程度に試験を終え、試験会場である学校を後にした。
その時もまた、きっとあの木は見守ってくれていた。