「退院できることになってよかったですね、では私はこれで失礼します」

そう言うと静かに病室を後にする石川医師。

石川が病室を後にすると優がまるで自分の事のように嬉しそうに祝福の言葉をかけてくる。

「おめでとう隼人、これでやっと家に帰れるわね」

優からの祝福の言葉に対し笑顔で礼を言う隼人。

「ありがとう優、でも僕は記憶がないだろ? 帰れると言ってもいまいちピンとこないんだ」

「そっかぁ、それもそうよね、じゃあどうする?」

「何が?」

「帰る家よ、記憶がまだ戻っていないのなら実家で様子を見た方が良いのかと思って、それともあたしの家に来る? 今新居も建てているの、ほんとは新居が出来上がるまで仮住まいとして二人で隼人のマンションに住むはずだったんだけど隼人がこんな事になっちゃったでしょ? あたしが今まで住んでいたマンションもまだ解約前だったからもう少し様子を見ようって事になって引っ越さずにそのまま住んでいるのよ」

「優が僕の家に来たんじゃだめなの?」

「あたしも隼人のマンションの場所知っているし鍵も持っているからそれでもいいんだけど、何となくうちに来てもらった方が良いかと思って」

「そう言う事だったんだね、ごめんなこんな事になってしまって」

自分のせいで申し訳ないとばかりに、俯き謝罪をする隼人。