「そんなの嘘だ! だって僕が目を覚ました時そばにいたのは絵梨だったじゃないか」

「それも真相はこうなのよ、最初から隼人のそばにずっといたのはあたしなの、今日だって一番にお見舞いに来たのはこのあたしだったでしょ?」

「それはたまたまだったかもしれないじゃないですか」

「たまたまなんかじゃないわ、本当にそうなのよ。昨日も元々隼人のそばにはあたしがいたんだけど、あとから絵梨がお見舞いに来て絵梨に出す飲み物を売店に買いに行っている間に隼人が目を覚ましたのよ。それであたしがいない隙に隼人が記憶を失っていることを良い事にあなたに対して絵梨が婚約者だと嘘を言ったのよ!」

この優による説明によりどちらの言う事が本当なのか混乱してしまう隼人。

「まさか絵梨がそんな事するわけないじゃないですか、信じられない、そもそもこんな嘘を付いたって僕が記憶を戻せばすぐに嘘だってバレるじゃないですか!」

「そのまさかなの、隼人が記憶を戻した時の事をどう考えていたかは知らないけどほんとにそうなのよ、さっきあたしが仕事を辞めたといったのも隼人と結婚するためだったの」

「そんなの嘘だ、僕が記憶を取り戻せばバレることなのに、こんなことして絵梨に何の得があるんだ」

「そこまで言うならこれを聞いてみて」

そう言うとスマートフォンを取り出した優は、ボイスレコーダー機能を立ち上げるとそれを再生した。