「良いんですよ気にしていませんから、それに事故の原因を作った人も謝りに来て事情も知っています。隼人さんが悪いわけじゃないじゃないですか。何より隼人さんの命が助かったんだから言う事ありません」

「ありがとうございます。そう言って頂けると少しは気が楽になります」

優は絵梨を問い詰めるため病室から連れ出した。

「ちょっと絵梨来て」

この時優の口から放たれた声はとても低く明らかに怒りに満ちていた。

優の怒りの言葉に悪びれる様子もなく、隼人に一声かけると優の声に従い病室を後にする絵梨。

「なによ優、ちょっと待っていてね隼人、すぐに戻って来るから」

二人は病棟の端にある談話室へと向かった。

「絵梨一体どういうことなの? 隼人の婚約者はあなたじゃなくてこのあたしじゃない。隼人が記憶喪失になった事を良い事にあたしから彼を奪う気?」

「分かっているじゃないその通りよ、だって彼かっこいいじゃない」

「どうしてこんな事するのよ!」

「ずっと前から隼人に対してよくわからない感情があってそれが何なのかついさっき分かったのよ。好きになっちゃったのよね隼人の事」

まさかの絵梨の言葉に怒りを覚えた優の表情は見る見るうちに紅潮していく。