その後主治医の石川医師が看護師の橘と共に駆け付けると、石川医師の手により隼人に対し診察などが施されていく。

身体的には問題ないようだったが、ところがこの時の隼人の一言によりまさかの事実が発覚してしまう。

「すみません、ここどこですか」

「どこって、ここは病院だよ」

絵梨が不思議そうに応えると更に続ける。この時の隼人の表情からは生気が失われており、事故に遭う前の彼とはまるで違っていた。

「隼人さんは事故に遭ってこの病院に運ばれてきたのよ、覚えてないの?」

「分からない、僕の名前隼人っていうの?」

そんな隼人のまさかの言葉にお互い顔を見合わせた石川と橘。すると石川医師は隼人に対しいくつかの質問をしていく。

「そうですよ、あなたの名前は隼人って言うんです。ではお聞きしますね、あなたの名字は何というのか分かりますか?」

「分かりません。自分の名前もわからなかったのに名字なんて分かる訳ないじゃないですか!」

「では年齢は?」

「それもわかりません」

「でしたら今は西暦何年何月か分かりますか?」

「分からない、何故僕はこんな事も分からないんだ」

「良いですよ慌てなくて、ゆっくりと思いだしていきましょうね」

落ち着かせるように優しく語り掛ける石川医師。