「パートなんかやめちゃえばいいじゃない、そしたらもっと見舞いに来る時間作れるのに」

「何言っているのそう簡単にいかないのよ、絵梨だって働いているんだから分かるじゃない」

「そりゃ分かるけどさ、でも自分の息子が事故に遭って入院しているのよ、意識だってまだ戻らないのに隼人さんの事心配じゃないのかな?」

「そんな訳ないじゃない! そう言う事を言うもんじゃないわ、絵梨一体どうしたのよさっきから、いつものあなたはこんな事言う子じゃなかったじゃない」

優のその言葉通り、いつもの絵梨は活発な性格ではあるものの人の事を悪く言う事もなくあまり波風立てるような子ではなかった。それなのにこの時ばかりは何故かいつもの絵梨と違っていた。

「良いじゃない別に、あたしだって隼人さんの事心配なのよ」

「心配してくれるのはありがたいわ、でもあまりお義母さんたちの事悪く言わないで、それに働かなかったら治療費だって払えないのよ、そのくらいあなただって分かるでしょ?」

もちろん絵梨だってこんな事言われなくても分かっていたが、何故か絵梨の気持ちが許さなかった。後にこの思いが何なのか気付く事となる絵梨。

「分かったわよ、悪かったわ」

「それよりあなたはどうしたのよ、今頃仕事中のはずじゃない」

「今はちょうどお昼休みだから様子見に来ただけよ、だからあまり時間がないの、もう帰るわね、どうかお大事に」

そうして絵梨は静かに病室を出て行った。