「もうよしなさい母さん、ここは病院だぞ静かにしなさい。起きてしまったものは仕方ない、今彼女を責めたってどうにもならないんだ、とにかくここで処置が終わるまで待とう」

「でもこの人がしっかり子供を見ていてくれたらこんな事にはならなかったのよ」

「だからと言って彼女を責めても始まらないだろ」

晴樹の言葉に納得したわけではなかったが、それでも晴樹に叱られたため陽子はこの母親を責める事をやめるしかなかった。

晴樹はこの母親に対し語り掛ける。

「お子さんにけがはなかったですか?」

「はい、おかげさまで」

「なら良かった」

「ありがとうございます」
 
我が子を気遣う晴樹の言葉にこの母親の瞳からは一筋の涙がこぼれていた。
 
更に続ける晴樹であったが、この時の晴樹の言葉には怒りがにじんでいた。

「あなたもここはもう良いですから、お子さんを連れてお帰り下さい」

「でもそれでは申し訳がたちません、せめて息子さんの無事が確認できるまでここにいさせてください」

「そんな事良いですからお帰りください」

「でも原因はこちらにあるんです、このまま帰っては申し訳ないです」

だんだんとイラついてしまう晴樹。