≪絵師なら何でも描けるんじゃないの?≫


自分が絵を描き出す前は、実は私も「絵を描く人は何でも描けるんだろう」と思っていました。

しかし、人によって結構描けるものに開きがあったりするのです。


老若男女をすべて上手く描ける、という絵師さんは結構まれだと思います。
(※普段は漫画を描いている方や、プロの商業イラストレーターさんは別として)

特に、老人や赤ちゃん・極端に太った人など、一般的な体形から大きく逸れるキャラクターの描写が苦手という方は全般的に多い気がします。

しかしそれ以外にも……
・美少女絵ばかり描いている人の中には、男性キャラクターが描けない人もいたりします。
・イケメンキャラをたくさん描いている人の中には、女の子を描くのが苦手という人もいます。


だから、「この絵師さんの美少女絵が好きだから、カップルの絵を描いてほしい」と思い依頼しても、「男性キャラクターを描くのが苦手なのですみません」ということもありうるのです。

あるいは、一生懸命描いてくださったとしても、「美少女は素敵なのに男性キャラクターの方はちょっと微妙かも……」なんてこともあるかもしれないのです。


なので、その絵師さんのポートフォリオ・pixivの投稿などをよく見てみるとよいと思います。
普段どんな絵を多く描いているのか。

逆に、過去の制作物にほとんどないものを依頼したい時は、注意が必要だと思います。

普段〝現代学園モノの制服イラスト〟を描くことが多い絵師さんに、〝武器と鎧の重厚な中世ファンタジー〟イラストを依頼しても、受けてもらえないか、
付け焼刃の知識で見よう見まねで描くので、良い仕上がりにならない可能性があるということです。



これは個人的に見聞きした経験談なのですが……

私は男女の恋愛描写イラストを描くのが好きです。キスや抱擁など。

しかしながら、私よりもっとうまいプロのイラストレーターさんが、
「私はイケメンは描けるけれど、恋愛描写が苦手だから、女性向け恋愛ジャンルのイラストでプロになるのはやめたんだ」
と言っていました。

イケメンが描けるなら当然女性向け恋愛描写が得意だと考えそうですが、実はそういうわけではなかったんですね……。

これは私も、絵を描き始めてからかなり驚いたことの一つだったりします。




もちろん、普段は描いていないだけで、描こうと思えば老若男女・さまざまなジャンルを上手に描ける方もいらっしゃると思います。

普段描いていない絵柄でもどうしてもお願いしたい場合は、ご依頼の際に相談してみましょう。


でもやはり、普段から描かれていることが多いジャンル・絵柄・傾向の方が、よりよいものに仕上げてくださる可能性は格段にあがると思います。

イラスト制作を受注している絵師さんですと、受け付けられないものを事前に注意書きしている方もいらっしゃいますので、確認してみてください。

全体的に、老人・メカ・複雑な武器・グロテスク描写、などは、NGにしている人も多いように感じます。





それから、背景描写はものすごく負担が大きいです。

「女の子が一人立ってこちらを見ている絵」だけよりも、
「女の子が一人立ってこちらを見ている絵+背景に街並み」の方が圧倒的に時間がかかります。

なぜなら、女の子は一人描けば終わりですが、街並みは一つ一つ描き込んでいかないといけないからです。


なので、発注側からすると、「背景は適当に教室とかでいいです」と言っても、学校の背景を描くのはものすごく大変で、全然〝適当に〟とはいかないわけです。

描き方は人によりますが、パースをとって、細かく描写して、色を塗って……と。机と椅子、モブキャラなども一つ一つ描かないといけないわけで。

人物一人を描くよりも、非常に手間がかかるわけです。



あとは、「ちゃんとした背景が描けない」という絵師の方も結構いらっしゃると思います。

「人物を描く技術」と「背景を描く技術」はほとんど別物です。

その絵師さんの過去の制作イラストを見て、
背景部分をデザインにしていたり、
簡単なものを描き込んだだけだったり、
素材を貼り付けただけだったり、
背景は白紙、
ということが多い絵師さんには、リアルな背景や複雑な背景の注文は難しいと考えたほうがよさそうです。



逆に、普段の絵でも背景をとても雰囲気たっぷりに上手に仕上げている方には、期待して良いと思います。

ただし、私の感覚ですが、背景注文ありの方が圧倒的に値段が上がる傾向があると思います。

なぜなら、
・人物より描く手間がかかる
・描ける人が少ないので、価格競争により値段が下がらない
からです。


なので、なるべく依頼料を安くしたいという方は、
・背景をなしにする
・背景を素材を貼り付けただけにしてもらう
・ぼかした感じの簡単な背景でお任せする
などの手があると思います。

背景でなく、柄などのデザインにしてもらうという手もありますしね。(またこれも上手く出来る人と出来ない人がいますので、ポートフォリオを要確認ですが)


大事な作品の表紙なので、背景にもしっかりこだわりたいという方は、キャラクターだけでなく背景描写も上手な絵師さんを探してみましょう。


また、こちらもキャラクターと同様に得手不得手があったりします。

普段「現代学園モノ」の背景を多く描いている人に、「古代神殿のある森林」を頼んでも、難しかったりします。

ご依頼の際に事前に確認してみましょう。