「小説に絵を描いてほしいけれど、どうしたらいいか全然分からない」方 向けコラム

≪リテイク・修正指示はお願いしていいの?≫


基本的に承っている人がほとんどだと思いますので、遠慮なく伝えましょう。

「リテイクは3回まで」「2回までは無料。2回以降は一回〇〇円」と明記している絵師さんもいますので、心配な方は依頼前に確認してみましょう。


ちなみに私は、本制作前のラフ制作時点でのリテイクは無制限で受け付けています。

やはり自分自身が小説書きなので、リテイク回数が上限一杯になってもうお願いできなくて、せっかく依頼したのに納得できない表紙絵に仕上がるのは、イヤだなぁと思いますので。


それでも、「白紙にして1から全部描き換えて」というようなことになると労力が大きいので、「希望がある場合は最初にそれを伝えてほしい」と思いますね。

あるいは、「こういう風にはしてほしくない」というNG事項などもあれば、先に伝えていただきたいですね。


なお、修正の指示は出来るだけ早い方が良いです。

後の方の段階になると描き換えることが難しくなってしまいますので、気になっている点は早めに相談しましょう。

完成後の修正は受け付けていない絵師さんも多いです。

≪絵の制作期間ってどのくらいかかるの?≫


本当にピンキリです。

普段は別の仕事をしている人が余暇を使って描いている場合、数週間~数か月かかることもあるでしょう。

専業のイラストレーターさんや、自由な時間が多い人などは、すぐに仕上げてくれることもあります。

依頼前に尋ねれば、おおよその予定納期を教えてもらえると思います。


ちなみに私は、内容にもよりますが『平均2~7日』ほどで納品しています。

「早いですね!」と依頼してくださった方に驚かれることが多いので、この納品速度は早い方だと思った方が良いかもしれません(汗)

ですので、絵が必要な期日が決まっている場合は、間に合うようになるべく早めに依頼をする方が良いと思います。

病気や事故・家庭の都合・PCの故障など、トラブルが生じる可能性もあります。余裕を持って依頼しましょう。

≪絵と一緒にタイトルも入れてもらえる?≫


デザイン技術も持った絵師の方だったらいいと思うのですが、そうでない場合、ちょっと残念な仕上がりになる可能性もあることを考慮しておきましょう。

絵の技術と、ロゴデザインの技術は全くの別物です。

「クオリティは二の次なので、入れてくれさえすればいい」という方は、お任せしてもよいと思いますが。

でもやはり、その道のプロであるデザイナーさんにタイトルロゴをお任せすると、まるで市販品のように見栄えが垢抜けますよ。

SKIMAやココナラ、ツイッターなどで検索すれば、タイトルロゴ制作を受け付けている方が沢山いらっしゃいます。

同人誌にする場合でも、ネット小説の表紙絵にする場合にも、プロがデザインしたタイトルだとやはり目を惹く力が全然違います。


参考に、両方とも私が制作したイラストですが、一つ目は私がタイトルを打ち込んだもので、二つ目はプロのデザイナーさんに依頼したものです。





デザイン制作:miminga様(https://skima.jp/profile?id=153847)(https://coconala.com/users/302419)

見栄えが全然違うのが分かると思います。どちらが本屋に並んでいてもおかしくないかと言ったら、圧倒的に後者でしょう。
(私のセンスと技術が無さすぎるという点はさておいて……)

≪絵師なら何でも描けるんじゃないの?≫


自分が絵を描き出す前は、実は私も「絵を描く人は何でも描けるんだろう」と思っていました。

しかし、人によって結構描けるものに開きがあったりするのです。


老若男女をすべて上手く描ける、という絵師さんは結構まれだと思います。
(※普段は漫画を描いている方や、プロの商業イラストレーターさんは別として)

特に、老人や赤ちゃん・極端に太った人など、一般的な体形から大きく逸れるキャラクターの描写が苦手という方は全般的に多い気がします。

しかしそれ以外にも……
・美少女絵ばかり描いている人の中には、男性キャラクターが描けない人もいたりします。
・イケメンキャラをたくさん描いている人の中には、女の子を描くのが苦手という人もいます。


だから、「この絵師さんの美少女絵が好きだから、カップルの絵を描いてほしい」と思い依頼しても、「男性キャラクターを描くのが苦手なのですみません」ということもありうるのです。

あるいは、一生懸命描いてくださったとしても、「美少女は素敵なのに男性キャラクターの方はちょっと微妙かも……」なんてこともあるかもしれないのです。


なので、その絵師さんのポートフォリオ・pixivの投稿などをよく見てみるとよいと思います。
普段どんな絵を多く描いているのか。

逆に、過去の制作物にほとんどないものを依頼したい時は、注意が必要だと思います。

普段〝現代学園モノの制服イラスト〟を描くことが多い絵師さんに、〝武器と鎧の重厚な中世ファンタジー〟イラストを依頼しても、受けてもらえないか、
付け焼刃の知識で見よう見まねで描くので、良い仕上がりにならない可能性があるということです。



これは個人的に見聞きした経験談なのですが……

私は男女の恋愛描写イラストを描くのが好きです。キスや抱擁など。

しかしながら、私よりもっとうまいプロのイラストレーターさんが、
「私はイケメンは描けるけれど、恋愛描写が苦手だから、女性向け恋愛ジャンルのイラストでプロになるのはやめたんだ」
と言っていました。

イケメンが描けるなら当然女性向け恋愛描写が得意だと考えそうですが、実はそういうわけではなかったんですね……。

これは私も、絵を描き始めてからかなり驚いたことの一つだったりします。




もちろん、普段は描いていないだけで、描こうと思えば老若男女・さまざまなジャンルを上手に描ける方もいらっしゃると思います。

普段描いていない絵柄でもどうしてもお願いしたい場合は、ご依頼の際に相談してみましょう。


でもやはり、普段から描かれていることが多いジャンル・絵柄・傾向の方が、よりよいものに仕上げてくださる可能性は格段にあがると思います。

イラスト制作を受注している絵師さんですと、受け付けられないものを事前に注意書きしている方もいらっしゃいますので、確認してみてください。

全体的に、老人・メカ・複雑な武器・グロテスク描写、などは、NGにしている人も多いように感じます。





それから、背景描写はものすごく負担が大きいです。

「女の子が一人立ってこちらを見ている絵」だけよりも、
「女の子が一人立ってこちらを見ている絵+背景に街並み」の方が圧倒的に時間がかかります。

なぜなら、女の子は一人描けば終わりですが、街並みは一つ一つ描き込んでいかないといけないからです。


なので、発注側からすると、「背景は適当に教室とかでいいです」と言っても、学校の背景を描くのはものすごく大変で、全然〝適当に〟とはいかないわけです。

描き方は人によりますが、パースをとって、細かく描写して、色を塗って……と。机と椅子、モブキャラなども一つ一つ描かないといけないわけで。

人物一人を描くよりも、非常に手間がかかるわけです。



あとは、「ちゃんとした背景が描けない」という絵師の方も結構いらっしゃると思います。

「人物を描く技術」と「背景を描く技術」はほとんど別物です。

その絵師さんの過去の制作イラストを見て、
背景部分をデザインにしていたり、
簡単なものを描き込んだだけだったり、
素材を貼り付けただけだったり、
背景は白紙、
ということが多い絵師さんには、リアルな背景や複雑な背景の注文は難しいと考えたほうがよさそうです。



逆に、普段の絵でも背景をとても雰囲気たっぷりに上手に仕上げている方には、期待して良いと思います。

ただし、私の感覚ですが、背景注文ありの方が圧倒的に値段が上がる傾向があると思います。

なぜなら、
・人物より描く手間がかかる
・描ける人が少ないので、価格競争により値段が下がらない
からです。


なので、なるべく依頼料を安くしたいという方は、
・背景をなしにする
・背景を素材を貼り付けただけにしてもらう
・ぼかした感じの簡単な背景でお任せする
などの手があると思います。

背景でなく、柄などのデザインにしてもらうという手もありますしね。(またこれも上手く出来る人と出来ない人がいますので、ポートフォリオを要確認ですが)


大事な作品の表紙なので、背景にもしっかりこだわりたいという方は、キャラクターだけでなく背景描写も上手な絵師さんを探してみましょう。


また、こちらもキャラクターと同様に得手不得手があったりします。

普段「現代学園モノ」の背景を多く描いている人に、「古代神殿のある森林」を頼んでも、難しかったりします。

ご依頼の際に事前に確認してみましょう。

【どうしても無償で描いてほしい場合】


お金は出せないけれど、どうしても絵を描いてほしいという場合もあると思います。
経済的に厳しい状況の方だったり、まだバイトが出来ない学生さんだったり。


そういう場合は、小説の紹介文(あらすじ)などのところに、
「表紙絵/挿絵を描いてくださる方を募集中です。お気軽にご連絡ください。(※無償になります)」
などと書いておくと、連絡があるかもしれません。

人気のある作品、評価の高い作品ですと、ファンがついていたり数多くの読者がいたりしますから、ご縁に恵まれる場合もあると思います。


私はツイッターを使っていないので詳しいことは分かりませんが、ハッシュタグなどで#絵師募集 #表紙絵募集などと書けば、どなたかの目に留まることもあるのではないでしょうか。


「無償だとさすがに悪いな…」と思う場合は、『※薄謝あり』などとしてもよいかもしれません。ネット上で簡単に受け渡せるものとして、たとえばアマゾンギフトカードで1,000~5,000円など。



また、絵描きの側でも、「小説の表紙絵を描いてみたい!」と思っている方は結構いらっしゃるように思います。

でも、
「まだあんまり上手くないから自信が無いし……」
「お金を取れるほどじゃないし……」
「描いてみたいけど、自分の絵じゃ満足してもらえなかったらどうしよう」
と、不安をかかえていたりするんですよね。


それは、”本当にまだあまり上手くない方”も、”実際はすごく上手いのに自信がないだけという方”もいらっしゃいます。

そのあたりの不安を募集側で解消してあげられたら、手を挙げてもらいやすくなるのではないかなと思います。




ただ、こういう形式で募集する場合、どんな絵師さんが来るかは全く分かりません。(そもそも誰も来ないかもしれません)

運がよければ「イメージにピッタリ! しかもすごくハイクオリティ!」ということもあるかもしれません。
もともとその小説が好きな読者さんだったり、これから絵の依頼を受け始めるステップにしたいという方だったり。


ですが、「うーん、作品のイメージとは全然違うな……。しかもクオリティもイマイチだ……」という可能性も大いにあり得ます。
何せ、無償で募集しているわけですので……。

しかし、こういう触れ込みで募集している以上、断るのはなかなか難しいところがあります。

その点もよく考えて、募集文を考えたり、募集をかけたりした方がよいと思います。




それから、無償(あるいは労働対価には見合わない薄謝)で描いてもらう場合はいくつか心に留めておいた方がよいと思う点があります。


まず、あくまでタダで描いてもらっているので、あまり多くのリテイクは希望しにくくなります。

きちんとお金を払って依頼している場合は、「相応の対価を差し出しているのだから」と思い、遠慮なくリテイクや修正の希望が出来ると思うのですが。

ですが、無償の場合は、「タダで描いてもらってるのに、何度も注文して悪いなぁ」と思いながら希望することになりますし、
相手も「タダで描いてあげてるのになんでこんなに何回も直さなきゃいけないんだろう……」と思いはじめてしまうかもしれません。


また、無償ゆえに、どれだけ遅くなっても納期の催促がしにくくなるかと思います。




次に、いつの間にかフェードアウトされて絵が納品されない可能性もあります。

初めは「描いてみたい!」と思ってやる気満々で描き始めても、いざ人のための絵を描きはじめて、リテイクが重なったり、自分の描きたい絵が出てきたりすると、
「なんで私、お金もらってるわけでもないのに、こんなに他人のために時間を取られなきゃいけないんだろう……」などと思い始めてしまい、「やーめた」となる人もいるようです。

何せ、お金を払ってもらって描かせてもらっている案件でも、途中で音信不通になる人もいるそうですから……(汗)


特に、表紙絵一枚だけなどでなく、挿絵を継続してお願いする場合などに起こりやすいようです。



もちろん、「どういう形であれ、一度引き受けたなら最後まで遂行すべき」だというのは分かります。

ただ、それが無償となると、どうしてもモチベーションに関わってくるのは否めないと思います。


お金を払っているのなら、「最後までちゃんと描いてください」と強く訴えることもできますが、お金を払っていない場合こちらも強く言いにくくなります。

だから、スパッと依頼を切って次の人に依頼することも出来ず、そのうち連絡もつかなくなり、宙ぶらりんになってしまう……というパターンを何度か見たことがあります。




また、友人に絵師がいるという場合は、その方に頼むのもOKだと思います。気軽に頼み合える関係ならお互いwin-winで最高だと思います。

ですが、そこまで信頼関係が育っていない場合、一方的に負担を強い続けてしまうと、その関係にヒビが入ってしまうということもあります。


親しき中にも礼儀ありとは言いますが、その依頼が本当に相手の負担になっていないか、よく考えて頼んだ方がよいかなと私は思います。

せっかく頼んでくれたのを断るのもメンタルが削られるので、無理して「いいよ」と言ってしまう方も、きっといらっしゃいますのでね。




小説書きからすると、絵って上手い人ならサラサラっと描けるように見えるじゃないですか。
かくいう私も、絵を始める前はそう思っていました。

でも、上手い人ほど何度も描き直したり、構図を練り直したり、時間をかけて描いていたりするものなんですよね。

シンプルに見えるただの立ち姿でも、何時間も、何十時間もかけて描いて、バランスをとったり、ペン入れをしたり、塗りこんだり、色を調整したりしているのです。

どんな絵も、すごく時間も労力もかかっているんですよね。


自分のための絵なら、明確な「描きたい!」という熱意があるのでモチベーションが続きやすいですけども、
他人のために描く絵は、自分にとってはそこまで興味をそそられる内容ではない場合もありますから、モチベーションの持続が難しかったりするわけです。


その点、有償で依頼されていると、「自分の絵にお金を払ってもらっているのだから、最後までしっかり期待に応えて描かないと!」と、モチベーションを維持しやすくなると、私は思います。

【使用可能範囲は必ず確認!】


「お金を出して描いてもらったのだから、何をしてもいい」というわけではありません。
特にお金が絡む場合は慎重に確認しましょう。


事前に使用範囲が分かっている場合は、ご依頼時にその旨を記載しましょう。

・イベントで販売する同人誌の表紙に使いたい

・個人的なグッズ制作に使用したい

・電子書籍として販売する表紙に使いたい

・個人観賞、SNS掲載

・FANBOXで課金してくれているファンに限定配布したい
など。


商用利用をする場合は、料金が+αされる場合が多いです。
トラブル防止のため、必ず事前にご相談しましょう。


基本的に、お金の発生しない使用範囲に関して細かく言う絵師の方はあまりいないと思います。

その中でも、よく注意をされているのは以下のようなことです。

・自作発言をしないでください

・勝手に絵を描き換えたり、色を変えたりしないでください

・二次販売しないでください

・配布をしないでください
など。

常識的に考えれば、普通はしないことばかりなので大丈夫だとは思います。
(でも、たまにそうじゃない人もいるので、念のために書いているのだと思います)



また、完成品だけでなく、制作段階では何回か「ラフ」や「下書き」などを受け取ることがあると思います。

それを外部に出したい場合は、絵師さんに確認をとった方が良いでしょう。

「描いてもらった絵のメイキングを載せたい」
「ツイッターに今描いてもらってますとお知らせしたい」
など、人によって色々要望はあると思います。

ただ、制作の途中段階のラフというのは、絵師側としてはそもそも外に出す前提として描いていないので、人によっては嫌がる方もいらっしゃいます。

「全然いいよ」という方もいらっしゃるかもしれませんが、トラブル防止のためにも、事前に必ず聞いておいた方が良いです。




最後に、よく言われる「著作権譲渡」についてですが。

最近はSKIMAやココナラなどでも「著作権も譲渡してください」とさらっと書かれているのですが、本来は契約書を交わすような本当に大変なことなのです。

多分、さらっと「著作権譲渡OKです」と言ってしまう絵師さん側も、よく分かっていないのだと思います(汗)

著作権の詳しい説明については、ネットに分かりやすい解説サイトがたくさんあるのでそちらに譲るとします。


著作権譲渡をすることで起こりうる、絵師側のリスクについて簡単に書きますね。

・自分の描いた絵でも、自分の絵として自由に公表できない

・譲渡した相手が、それで無限にグッズ制作や販売・配布等が可能になる

・イラストの権利の転売も許可することになる

・商標登録やフリー素材に登録されることもある

・制作者の意図しない利用も可能になる(ヘイト系サイトや、成人向けコンテンツなど)


描いた人がその絵から得られるはずの権利をすべて譲り渡すことになるので、著作権譲渡案件は本来非常に高額になるわけです。


それに、よく話を聞いてみると、別に依頼側も「その内容なら著作権を譲渡してもらう必要はないのでは?」と思うようなことも多々あります。

ただ、あとあとトラブルを防止したくて「著作権も渡してほしい」と言っているのようです。
(あとあとのトラブルより、著作権譲渡関連のトラブルの方がありそうな気がしますが……)


私の場合、著作権譲渡を希望される方には理由をうかがって、適宜「使用範囲の話し合い」ということにさせていただいています。

こちらも権利を持ったままでいられますし、相手も高額な依頼料にならずに済みます。


【おわりに】


とりあえず以上になります。

他にも思いついたことがあれば、追加していきたいと思います。

また、お聞きになりたい質問などあれば、送っていただければ可能な範囲で回答を追記いたします。

あくまで「趣味の小説書き」&「ちょっと依頼を受けてる絵描き」の私で良ければ、ですが。

匿名で質問出来るマシュマロからどうぞ⇒https://marshmallow-qa.com/izumixizumi


ではでは、小説書きの皆さんに素敵なイラストレーターさんとの出会いがありますように!

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