◇◇◇
「そんなもの読んでないで、さっさとまとめろよ。今日中に終わらねぇだろ」
様子を見にきた父親が、額から流れる汗を首にかけていたタオルで拭う。
「近くなんだから、いつでも取りに来ればいいじゃん?」
手にしていた漫画をダンボールに放り込み、ペットボトルのキャップを回す。
炭酸の抜ける音を聞き、少しぬるくなってしまったコーラを飲むと、本棚から新しい漫画を手に取った。
夏休みが始まって数日が過ぎた今日、住み慣れた家から荷物を運び出す。
カフェの目と鼻の先にあるマンションに空室が出たとかで、俺に断りもなしに契約を済ませたせいだ。
「ほら、さっさとやれよ」
せっかくの休日だというのに朝から汗を流す父親。
「わかってるよ」
手にしていた漫画をダンボールに放り込み、空っぽの胃にコーラを流し込んだ。
前日になっても荷造りひとつしなかった。
ちょっとした抵抗、ってやつだ。
「俺、このままばあちゃんちに残ろっかな」
既にエアコンの取り外しが済んだ部屋の中で、必死に羽根を回す扇風機に顔を近づけた。
「…ったく。なにを今さら。おまえと一緒に住みたいって言ってんだろ?何度も言わすな。アホ」
開けっ放しの窓から入り込んできた生ぬるい風が壁のカレンダーをカサカサと揺らしていった。
「ほんとにそう思ってんの?」
低い音を出しながら勢いよく回る扇風機の羽根。そこにぶつかった声はマヌケなほど震えていた。
「どういう意味だよ」
「平井さんは、ほんとはふたりだけで新婚生活ってやつ、送りたいんじゃないの?」
「そんなもの読んでないで、さっさとまとめろよ。今日中に終わらねぇだろ」
様子を見にきた父親が、額から流れる汗を首にかけていたタオルで拭う。
「近くなんだから、いつでも取りに来ればいいじゃん?」
手にしていた漫画をダンボールに放り込み、ペットボトルのキャップを回す。
炭酸の抜ける音を聞き、少しぬるくなってしまったコーラを飲むと、本棚から新しい漫画を手に取った。
夏休みが始まって数日が過ぎた今日、住み慣れた家から荷物を運び出す。
カフェの目と鼻の先にあるマンションに空室が出たとかで、俺に断りもなしに契約を済ませたせいだ。
「ほら、さっさとやれよ」
せっかくの休日だというのに朝から汗を流す父親。
「わかってるよ」
手にしていた漫画をダンボールに放り込み、空っぽの胃にコーラを流し込んだ。
前日になっても荷造りひとつしなかった。
ちょっとした抵抗、ってやつだ。
「俺、このままばあちゃんちに残ろっかな」
既にエアコンの取り外しが済んだ部屋の中で、必死に羽根を回す扇風機に顔を近づけた。
「…ったく。なにを今さら。おまえと一緒に住みたいって言ってんだろ?何度も言わすな。アホ」
開けっ放しの窓から入り込んできた生ぬるい風が壁のカレンダーをカサカサと揺らしていった。
「ほんとにそう思ってんの?」
低い音を出しながら勢いよく回る扇風機の羽根。そこにぶつかった声はマヌケなほど震えていた。
「どういう意味だよ」
「平井さんは、ほんとはふたりだけで新婚生活ってやつ、送りたいんじゃないの?」