真っ白な皿の上にのせられたトースト。具だくさんのコンソメスープに、ブロッコリーとトマトのサラダ。おまけに、ウサギを真似たりんごまで並べられていた。
椅子に座って早々に、バターの塗られたトーストにかぶりつく。
「いつも言ってるけど、さ」
皿から右へと移した視線は、既に弁当箱が入れられた黒色の保冷バッグで動きを止めた。
「パン一枚焼いてくれたらそれで十分だし。弁当だって毎日いらない。適当にやるから大丈夫」
無理しなくていいということは、今までに何度も言ってきた。
「だって。三食きちんと、しっかり食べること。これってとっても大切なことだよ。無理なんてしてないからね。汐音くんは気にしなくていいの。きちんと食べてくれたらそれでいいの」
今まで何度となく聞かされてきた。
お互いに懲りないよな。
フッと漏れてしまった笑みをごまかすように、湯気の立ちのぼるコーヒーに息を吹きかける。
「やっぱダメだ。熱くて飲めない」
空いている右手をヒラヒラと動かし、牛乳をくれと催促する。
「どうも」
冷蔵庫から出してもらった牛乳パックの口を開け、カップのふちスレスレのところまで注ぐと湯気は消え、色も香りも柔らかくなる。
なんだか心まで丸くなっていくような気がした。