平井さんには、他の人とは違う何かを感じ取ったんだろう。それはそれでいいことなんだと思う。喜ばしいことなんだ。
不意に、向かいに座るメグが俺の手を握った。
無意識に胃のあたりを摩っていた俺を気にしてのことだろう。
「大丈夫だよ。大丈夫だからね」
「………ん、」
喉に引っかかっていたものがストンと落ちていったような感じ。胸のつかえがスーッと消えていく感覚もした。
やっぱりメグはすごい。
メグの存在や言葉が有り難かった。ただ、メグに乗っかって追加したホイップで胃がやられそうになる。
「あげる」
半分ほど飲んだラテをメグに差し出すと、あたしもお腹がいっぱいなのに、と笑った。
「やっぱり一緒に住むんだよね?」
「すぐじゃない、けど。たぶん。とりあえず先に籍だけ入れるって」
「そっか」
「うん」
メグは俺の手を握ったままだ。時折り、親指で手の甲を撫でられる。校則で禁止されていると言いながらも、薄いピンクの色をつけた爪が照明に反応していた。
「一緒に住まなくちゃ、いけないのかな」
「え?」
「だって、そんなのってさ、」
その先の言葉を、メグは珍しく呑み込んだ。いつも、なんでもかんでも口にするくせに。
「俺は別々がいいって言った。今まで通り、ばあちゃんとこに住む、って。でも駄目だって」
ばあちゃんにも悪いからと、訳のわからないことを言われた。今まで散々世話になっておきながら、今さら悪いもなにもないだろう、と思うのだけど。その考えは間違ってるのだろうか。