「再婚っ!?おじさんが?」
 まん丸な目をふちどる長いまつげは、まばたきをするたびにパサパサと音を立てているようだった。
「メグには言っておいたほうがいいと思って」
「あ……。うん。……ありがと」
 駅近くのコーヒーショップ。真新しい制服をまだ上手に着こなせないのだと、会う度に聞かされていた俺はメグの胸元の赤いリボンをつまみ、似合うね、と褒める。でも、そんな言葉も響かないくらいに衝撃的だったようだ。まだ目をぱちぱちとさせている。
「あ。小倉たちにはまだ内緒で」
 平井さんの存在はとくに伝えてこなかったし、根掘り葉掘り訊かれても今はメンタルがやられるだけだ。タイミングがきたらそのときにでも、くらいに思っていたほうが気が楽だ。

「二十五とか、そんなだったよね」
「たしか、ね。そんなだった」
「……そっか」
 十ニ年もの間、独りでいた父親が再婚する。
 きっと、今までにも彼女がいたことはあったと思う。でも、その存在を知らされることは一度もなかった。一緒に食事をすることも、買い物に行くことも、学校行事もイベントごとにも。誰かを連れて来たことはなかった。なのに、だ。
「一緒にメシにでも行くか?」「これ、おまえのシャツ。選んでもらった」「誕生日にケーキを焼いてくれるらしいぞ」
 におわせが、ひどい。ひどかった。そんなの、気づいてくれというのを上まわってる。もう、受け入れろ、と言わんばかりだ。