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自分から英介に話しかけるのはためらわれたけれど、思えば英介はいつだって舞を助けようとしてくれていた。


小さくて華奢な英介に構われたら余計にイジメられると考えて突き放してしまったけれど、英介は十分に勇気のある男だったんだ。


どれだけ自分がからかわれても、笑われても、絶対に舞を見放したりはしなかった。


青っちに出会ってから舞の視野は広くなり、英介のそういう部分も見えるようになっていた。


だから今回話しかけるのをためらったのも、英介にヒドイことを言ってしまったことを思い出したからだった。


決してクラスメートの目が気になるからじゃない。


「あの、英介……」


恐る恐る声をかけると英介は教科書から顔を起こした。


その頬は少し赤くなっている。


「なに?」


相変わらず女の子のような高音だ。


「えっと、この前はヒドイこと言ってごめんね」


舞は早口でそう言って頭を下げた。


すると英介は笑って「別に、気にしてないから」と言ってくれた。


ホッとして顔を上げる。