ずっと言えなかったこと。


青っちにだけは秘密にしておきたかったことだ。


だけどあんな泥だらけの姿を見られたらもう、かくしてはおけない。


青っちは一瞬大きく目を見開いて、それから「そっか」とだけ言った。


どうして? とか、いつから? なんて質問はしない。


青っちはイジメは唐突に始まり、そして唐突に終わることを知っている。


理由や期間を聞いたって意味がないんだ。


「青っちはどうだったの、前の学校で」


舞は愛の言っていた噂について思い出しながらそう質問をした。


もしかしたら、なにか聞かせてくれるかもしれない。


「俺は別に、なにもないよ」


青っちは救急箱を開けながらそう答えた。


消毒液を取り出して、舞の膝に垂らしていく。


「本当に、なにもない?」


消毒液のしみる感覚に少しだけ顔をしかめながら舞は聞いた。


青っちは一瞬舞へ視線を向けて、膝に絆創膏を貼り付ける。