「どうして? 俺、舞がいればそれでいい」


その言葉に舞は唇を引き結び、泣きそうな顔で青っちを見上げた。


青っちは昔の舞しか知らない。


だからここまで一緒にいたがるんだ。


でも昔の舞はもうどこにもいない。


自分の身の保身のために、英介や青っちを遠ざけることしかできない、卑怯な人間しか、ここにはいない。


「そんなこと言わないで。青っちだって世界を広げないと」


どの口がそんなことを言っているのだと、自分でおかしくなってしまう。


私は今手を差し伸べようとしてくれている人を、自分から突き放しているというのに。


「もしかして俺のこと迷惑?」


「迷惑なんかじゃないよ。でもさ……」


言葉を続けようとしたけれど、青っちが頬に触れてきたので続かなかった。


かすかな痛みを感じて顔をしかめる。


「どうしたのここ。少し赤いけど」


「き、気のせいじゃない?」


「そんなわけないよ。舞の頬が赤くなってる」