「本当に、ただの喧嘩?」


「はい」


「相手は誰?」


「幼馴染です。隣の学校なんですけど、いつも一緒に通学してて、でも今日は口喧嘩しちゃって、ついお互いに手が出たんです」


苦しい言い訳だった。


先生は身長に舞の言葉に耳を傾けている。


こんな風に嘘をつくのは初めてのことじゃない。


上靴を隠されたとき、教科書を破かれた時に幾度となく嘘はついてきた。


そのたびに胸はシクシクと傷んで、まるでこちらが悪い人間になってしまったかのような感覚を覚えたけれど。


それでも自分のやっていることは間違えていないはずだ。


これが、自分の身を守るために必要なことであるはずだから。


「……わかった。これ以上は聞かない。でも、次になにか妙に感じることがあったら、先生も黙っておけないからね」


「わかりました」


舞は笑顔で頷く。


だけど、内心、もうここにも来られなくなるかもしれないと、考えていたのだった。