「舞、こっちだ!」


不意に腕を掴まれて顔を上げると、いつの間にか英介が3人の間にわって入っていた。


今までこんなことはなかったので3人共目を丸くして英介を見ている。


舞も咄嗟には動けなかったが、強引に腕をひかれて足が前に出た。


そのまま走り出し、3人が後方からなにか叫んでいるが耳に入らない。


しばらく2人で走って昇降口までやってくると、ようやく英介は舞から手を離した。


英介に掴まれていた手首は赤くなっていて、少しヒリヒリする。


そのくらい必死で逃げてきたことがわかった。


それなのに舞は英介にお礼を言う気にはなれなかった。


「大丈夫だった?」


「余計なことしないでよ!」


英介は自分のことを本気で心配してくれている。


それは理解しているけれど、英介が出てくることで3人組からのイジメはエスカレートするのだ。


航にしてもそうだ。


とにかくあの3人組は自分に関わる人間がいればいるほど、イジメを悪化させていく。


どうして周りの人間にはそれがわからないんだろう。


「でも……」


「もうほっといてよ!」


舞は怒鳴りつけて、その場から逃げるように駆け出したのだった。