「どういう関係でもいいけどさぁ、調子乗らないでくれる?」


目の前に立つ恵美の声が低く、攻撃的になったのを聞き逃さなかった。


咄嗟に身を低くしようとしたが、横にいる2人が邪魔でうまくいかない。


そのすきに舞の平手打ちが飛んできた。


パンッと肌を打つ音がして、次に頬に熱が走る。


痛みを感じるよりも驚きが先に来て、頬はただただ熱かった。


「あの大男が仲間になったなんて思うなよ?」


恵美の言葉に舞は黙り込む。


青っちは確かに自分の味方をしてくれると思う。


だけど、巻き込む気は毛頭なかった。


一瞬、ほんの少しだけれど航が転校してこなければ、こんなことにはならなかったのにと、胸に浮かんできた気持ちを慌てて殺した。


なにも事情を知らない航は悪くない。


「わかってる」


口を動かすと少しだけ頬が痛んだ。


不思議と心臓はさっきよりも静かだった。


1度叩かれてしまえば、こんなものかという安心感が出てきてしまいそうで恐くなる。


それでも恵美たちはまだなにか言いたそうで舞を睨みつけている。


もう1度殴られるのかもしれない。


そう思って覚悟を決めたときだった。