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昇降口へ向かおうとした腕を捕まれて、舞は校舎裏へと引き込まれていた。


学校の壁と塀までの間が2メートルくらいしかない、狭くてジメジメとして陰湿な場所だ。


せめてこのブロック塀がフェンスなら、少しは開放感もあったかもしれないのに。


舞は息苦しくなってしまいそうな空間に第一ボタンを外した。


「お前さ、あの青木ってやつと知り合いなんだって?」


恵美がさっそく聞いてくる。


その質問をされると思っていた。


舞は頷くしかない。


教室内でのやりとりを見られているから、ごまかしは効かなかった。


「あのごっつい男、まさか彼氏じゃないよねぇ?」


粘つくような声で言ったのは淳子だった。


小首を傾げているので髪の毛が揺れる。


「そんなんじゃないよ」


「それでも、随分仲良さそうじゃん?」


愛が舞の髪の毛に触れる。


その指先の感触に背筋が冷たくなっていく。