「ここが門かぁ…」

目の前の巨大な建造物に圧倒されながら呟く。

ここをくぐったらもう戻れないんだな。

海底での思い出を一つ一つ思い出してみる。

人間界への憧れを語り合ったこと。

一緒に魚を捕まえたりして、支え合って生きてきたこと。

思い出してみれば、魔界へ行くのを少し躊躇してしまうほど海底は楽しかった。

でも、私は魔界に行って一流の歌手を目指すんだ。

海底を離れる寂しさと、魔界での第二の人生への楽しみを抱きながら、私は門をくぐった。