「なくなっちゃった〜」
「今日はもうないのよ? ゴンちゃんごめんね」
「むぅ〜」
この子は、こぎつねちゃんで“ゴン”と呼んでいる。というか私が名前をつけた。ゴンというのは、新見南吉さんのごんぎつねのゴンからきている。
……まぁ、なんで私が視えない存在の彼らを視れるかというと私が陰陽師の末裔だからだ――私、藤堂 悠花は陰陽師である安倍晴明を祖先に持つ由緒正しい退魔士として名家中の名家・藤堂家の当主の娘だからだ。皆が退魔術の核を持ち生まれ、生まれた時からあやかしが視える。
「悠花、仕事は見つかったのか? メンセツ、だったんだろ?」
「またダメだった」
「そうなのか……大変なんだな」
だが、しかし。
私はできるはずの“退魔術”ができない。その核がないから攻撃できない。
「じゃあ、春から無職?」
「まぁ……そうなるね」
「じゃ、これから四六時中一緒にいられる!?」
「そうだね」
「やったぁ」
いや、喜ばれても……複雑なんだけど。
というか、私が就職できないのはあやかしが視えちゃうことも関わっているんですけどね。