合格発表を待たずに中学の卒業式が行われた。

教室で担任の先生から一人づつに卒業証書が手渡されると、女の子たちや一部の男子からすすり泣く声が聞こえる。

式の途中から泣いている子もいた。

卒業式の日だけは、それまでの3年間がかけがえのない大切な時間だったって思い知らされる。

きっとこの日を過ぎたら、あとは新しい生活に向けて不安を抱えながら進んでいくだけ。

みんなでお互いの卒業アルバムに寄せ書きをしていく。いつの間にかみんな小学生でも中学生でもなくなって、漫画の主人公の年齢になってる。

いつかはその年齢も追い越しておとなになっていくのだろう。

おとなになってみたら、なんでこんなことで悩んでたんだろうって思うようなことも今なら全力で悩んでもいいかもしれない、なんて思えてくる。

窓から差し込む日差しの熱を吸い込んで、紺色のセーラー服が温かく感じた。

この制服を着るのも今日が最後だ。

温かく守られてきた三年間、そう思うとついにわたしも泣いてしまったのだった。




合格発表の日。

わたしと尚君は無事に北高に合格した。

「智花のお守りのおかげ」

そう言って笑う尚君。

わたしが告白するのはもう少し先のこと。

温かな春の日差しに向かって私たちは歩き出した。


<了>