筒形の大きなリュックを背負った外国人が何やら英語でまくしたてる。振り返りざまにあのリュックがわたしの帯に当たったのだろう。

お正月の晴れ着におしるこが染みこんでいく。それが熱いと感じるまでの数秒間、わたしの頭にあったのは「凶」の文字だった。

「新藤、大丈夫か?」

尚君が気付いて声をかけてくた。お守りを買いに行った母親を待つわたしはその時一人で、どうしていいのか分からず泣きそうになっていた。

尚君はお店の人に布巾を貸してもらって、わたしの着物を拭いてくれる。お店の床に膝をついている尚君のつむじが二つあることに気付いた。

ありがとうと言いたいのに、何故か言いそびれてしまった。

おみくじは結果が悪ければ木に結び、結果が良ければそのまま持ち帰る人が多いという。尚君は大吉だったのに枝に結んでいた。せっかくの大吉なのに。大吉を置いてきたせいで、わたしの不運に巻き込まれている。尚君の黒いズボンの膝が汚れてしまったのを見てわたしは唇を噛んだ。

そして馴れない草履の足を引きずるようにして初詣を終えたのだった。

考えようによっては、好きな人にお正月早々優しくしてもらえて、わたしにとっては大吉以上にラッキーな出来事として心に刻まれてもおかしくない。それなのに、凶を見てしまったわたしは悪い出来事しか目に入らなくなってしまっていた。