右手に筆、左手にはパレットをはめた僕の目の前には、まだ何も描かれていない、純白で端麗なキャンバスがただ一枚置かれていた。最近は、この光景を親の顔よりも見ている気がする。それ故だろう。1+1の答えを考えるよりももっと早く、この先の結末も想像が出来た。

 一切の穢れを含んでいなかったはずのそれは、突如、徐々に漆黒へと染まっていった。次第にグシャグシャと歪な音を立て始めて、最後にはバラバラに砕け散った。残った残跡は、あたかも獣に食い散らかされた獲物のように見えた。僕の視界には、言葉だけでは表現のしようがない、あまりにも悲惨な光景が映っていた──────────