学校を取り巻く紅葉はすっかり
落ち
桜の蕾を付けて
今年の新入生を
また満開の花で迎える準備を
している。
『チンチンチンチン』
リンネが気が付けくと、
乗る予定の駅は
遥かに通り過ぎ、
チンチン電車通りを
ミナモの自転車は走っている。
「ねぇ、道変えたの、
さっきの、あの制服のせい?」
「リンネ、今でも嫌やろ。」
「もう、平気なのに。」
「そっか。」
ミナモの背中にリンネが、
今、初めて
自分の体温を
後ろ向き預けたのは
担任教師の思い出作りに
乗っかったから。だろうか?
そう、理由をつける
リンネの鼻腔に飛来する香り。
もう春には大学になるミナモとの
距離に
いつからか
香るようになったオードトワレ。
リンネが一瞬だけ
瞼を閉じると
背骨にミナモの鼓動を
感じる。
春花。2人は同じ大学生。
「あ、ミナモ!」
「わーってる、ホーム歩くんな」
チンチン電車のホームは
通り道に、突然現れる平均台。
いつも通り
リンネが、それを子供の頃習った
バレエポーズで渡るのも
ミナモは熟知している。
「案山子やな。」
「バレエ!」
「はいはい、プリマドンナな」
マドンナ時間、
ミナモは自転車を押して
リンネと並ぶと
真似事の切れ端でミナモは
わざとらしく
リンネの、手を取って
降ろす芝居をする。
そこから、
自転車・ミナモ・リンネ。
並んで歩くのも、お約束で
ホームの先にある交番にくれば
2人、巡査に手を振る。
『チンチンチンチン』
春色のラッピングをした
チンチン電車が
通り過ぎる。
「明日、補講の卒業式、
遅れんなよ。オレぼっち式なる」
ヤハタ・ミナモ
ユアサ・リンネ
脈絡なくミナモがリンネに
注意する。
「はいはい。結局2人だもんね。
卒業のリボン付ける2年も、
いないから、付け合いするの
恒例って、ミナモ知ってた?」
リンネも、慣れた返事で
明日の話をする。
「知ってる。男同士やと悲惨。」
「ほんま!女子やと可愛いのに」
「なあ大学、サークルどーする」
ミナモとリンネの少し未来の話。
「彼氏出来そうなとこに、
きまってるでしょ!絶対!」
「デッサンゼミは、とるやろ?」
「ミナモ、授業でやるのに、まだ
取る気?まあ、大事だけど。」
「そーゆーリンネも取るやろ。」
「わたしは、人体造形美術が
したいからなの。必要なの。」
そう言ってリンネは
ミナモの自転車かごに
元カレ色が褪せた鞄を
放り込むと
今度は、
荷台に
前向きに座ってみる。
「オレもデッサン、必要ー。」
ミナモの肩眉がちょっと
上がったのをリンネは下から
見てしまった。
「良かったね、美大ならデッサン
室デートしてくれる彼女いるよ」
「ほんま、それなー。」
それでも
ミナモも自転車に何もないように
自然と股がる。
「ミナモ、」
ミナモがペダルを漕ぎ始めて。
「何?」
リンネは、ミナモの腰に
腕を回した。
「何でもない。」
リンネが回す掌を
ミナモがポンポンと叩いて
「うん。」
と、頷くと、
『チリリン』と2人の音を
自転車のベルに乗せて鳴らす。
「もーちょい、走るか。」
どこか機嫌のよさそうな
ミナモの
声が
桜の柄のチンチン電車を
追い掛けた。
終
落ち
桜の蕾を付けて
今年の新入生を
また満開の花で迎える準備を
している。
『チンチンチンチン』
リンネが気が付けくと、
乗る予定の駅は
遥かに通り過ぎ、
チンチン電車通りを
ミナモの自転車は走っている。
「ねぇ、道変えたの、
さっきの、あの制服のせい?」
「リンネ、今でも嫌やろ。」
「もう、平気なのに。」
「そっか。」
ミナモの背中にリンネが、
今、初めて
自分の体温を
後ろ向き預けたのは
担任教師の思い出作りに
乗っかったから。だろうか?
そう、理由をつける
リンネの鼻腔に飛来する香り。
もう春には大学になるミナモとの
距離に
いつからか
香るようになったオードトワレ。
リンネが一瞬だけ
瞼を閉じると
背骨にミナモの鼓動を
感じる。
春花。2人は同じ大学生。
「あ、ミナモ!」
「わーってる、ホーム歩くんな」
チンチン電車のホームは
通り道に、突然現れる平均台。
いつも通り
リンネが、それを子供の頃習った
バレエポーズで渡るのも
ミナモは熟知している。
「案山子やな。」
「バレエ!」
「はいはい、プリマドンナな」
マドンナ時間、
ミナモは自転車を押して
リンネと並ぶと
真似事の切れ端でミナモは
わざとらしく
リンネの、手を取って
降ろす芝居をする。
そこから、
自転車・ミナモ・リンネ。
並んで歩くのも、お約束で
ホームの先にある交番にくれば
2人、巡査に手を振る。
『チンチンチンチン』
春色のラッピングをした
チンチン電車が
通り過ぎる。
「明日、補講の卒業式、
遅れんなよ。オレぼっち式なる」
ヤハタ・ミナモ
ユアサ・リンネ
脈絡なくミナモがリンネに
注意する。
「はいはい。結局2人だもんね。
卒業のリボン付ける2年も、
いないから、付け合いするの
恒例って、ミナモ知ってた?」
リンネも、慣れた返事で
明日の話をする。
「知ってる。男同士やと悲惨。」
「ほんま!女子やと可愛いのに」
「なあ大学、サークルどーする」
ミナモとリンネの少し未来の話。
「彼氏出来そうなとこに、
きまってるでしょ!絶対!」
「デッサンゼミは、とるやろ?」
「ミナモ、授業でやるのに、まだ
取る気?まあ、大事だけど。」
「そーゆーリンネも取るやろ。」
「わたしは、人体造形美術が
したいからなの。必要なの。」
そう言ってリンネは
ミナモの自転車かごに
元カレ色が褪せた鞄を
放り込むと
今度は、
荷台に
前向きに座ってみる。
「オレもデッサン、必要ー。」
ミナモの肩眉がちょっと
上がったのをリンネは下から
見てしまった。
「良かったね、美大ならデッサン
室デートしてくれる彼女いるよ」
「ほんま、それなー。」
それでも
ミナモも自転車に何もないように
自然と股がる。
「ミナモ、」
ミナモがペダルを漕ぎ始めて。
「何?」
リンネは、ミナモの腰に
腕を回した。
「何でもない。」
リンネが回す掌を
ミナモがポンポンと叩いて
「うん。」
と、頷くと、
『チリリン』と2人の音を
自転車のベルに乗せて鳴らす。
「もーちょい、走るか。」
どこか機嫌のよさそうな
ミナモの
声が
桜の柄のチンチン電車を
追い掛けた。
終