「1年の時から、ミナモが
好きなんは ユアサ、お前や。」
今日は卒業式なのに、
課題が出来ていない
わたしは、
卒業式に出る事が出来なくて、
ようやく今、
担任のデッサン教師に、
課題を提出しにきたけれど。
「え、先生、冗談でしょ?」
わたしは、担任に聞き返す。
「あー、もう時効になるやろ。
ヤハタ・ミナモから、ずっと
愚痴っちゅーか、なんだ、
相談されてたからなぁ。だから
補講課題、一緒にさせてたん
や。あれや、思い出作りな」
そういって担任は
自分の頭の後ろを掻いて、
「明日、補講の卒業式な。
時間、遅れんな。片付けてけ」
無責任に手を振って、
担任室から出ていけと合図する。
「片付けてけって、、こんなの
聞かされて、どんな顔すれば
いいのよ。バカ担任、、、」
わたしは、
重い足取りで 隣のデッサン室の
扉に向かう。
荷物だって、この中にある。
それだけなら、いいけど。
『ガラリ』
デッサン室の引戸を開けると
天井窓から初春差し込む、
太陽光の下に まだイーゼルを
立てて木炭を手にする
人影がある。
「ん?リンネ、どーしたん。
アカンかったか?直し?」
引戸の前から動けない、
わたしに気が付いた ミナモが
長い指に持つ木炭を
止める。
「通ったよ。これで明日、
補講の卒業式には出れるから」
前髪の間から見える
ミナモの目が 細くなって
「じゃ、オレも頑張るわ。
片付けるんやろ? ほな、明日」
緩やかに笑うと、
指の木炭を振ってバイバイって
した。
わたしはつい、俯いたまま
立てていた
イーゼルを壁際に直して、
自分の鞄を
まるで
いつも通りだという振りして
ひったくる。
「ミナモ、明日ね。お先。」
声が裏返らないように気を付けて
ミナモに返事をすると、
元来た引戸に歩けば、
「ちゃーす。」
3年間聞き馴染んだはずの
ミナモの別れ言葉に
背中が熱くなる。
わたしは
開けたままだった
引戸から逃げる気持ちで出ると、なるべく静かに閉めて、
ドキドキする鼓動を
悟られなかったことに安堵の
息をする。
明日は補講組の卒業式。
といっても、補講者は
ヤハタ・ミナモと
わたし
ユアサ・リンネだけ。
どう考えたって、
2人だけの卒業式になる。
好きなんは ユアサ、お前や。」
今日は卒業式なのに、
課題が出来ていない
わたしは、
卒業式に出る事が出来なくて、
ようやく今、
担任のデッサン教師に、
課題を提出しにきたけれど。
「え、先生、冗談でしょ?」
わたしは、担任に聞き返す。
「あー、もう時効になるやろ。
ヤハタ・ミナモから、ずっと
愚痴っちゅーか、なんだ、
相談されてたからなぁ。だから
補講課題、一緒にさせてたん
や。あれや、思い出作りな」
そういって担任は
自分の頭の後ろを掻いて、
「明日、補講の卒業式な。
時間、遅れんな。片付けてけ」
無責任に手を振って、
担任室から出ていけと合図する。
「片付けてけって、、こんなの
聞かされて、どんな顔すれば
いいのよ。バカ担任、、、」
わたしは、
重い足取りで 隣のデッサン室の
扉に向かう。
荷物だって、この中にある。
それだけなら、いいけど。
『ガラリ』
デッサン室の引戸を開けると
天井窓から初春差し込む、
太陽光の下に まだイーゼルを
立てて木炭を手にする
人影がある。
「ん?リンネ、どーしたん。
アカンかったか?直し?」
引戸の前から動けない、
わたしに気が付いた ミナモが
長い指に持つ木炭を
止める。
「通ったよ。これで明日、
補講の卒業式には出れるから」
前髪の間から見える
ミナモの目が 細くなって
「じゃ、オレも頑張るわ。
片付けるんやろ? ほな、明日」
緩やかに笑うと、
指の木炭を振ってバイバイって
した。
わたしはつい、俯いたまま
立てていた
イーゼルを壁際に直して、
自分の鞄を
まるで
いつも通りだという振りして
ひったくる。
「ミナモ、明日ね。お先。」
声が裏返らないように気を付けて
ミナモに返事をすると、
元来た引戸に歩けば、
「ちゃーす。」
3年間聞き馴染んだはずの
ミナモの別れ言葉に
背中が熱くなる。
わたしは
開けたままだった
引戸から逃げる気持ちで出ると、なるべく静かに閉めて、
ドキドキする鼓動を
悟られなかったことに安堵の
息をする。
明日は補講組の卒業式。
といっても、補講者は
ヤハタ・ミナモと
わたし
ユアサ・リンネだけ。
どう考えたって、
2人だけの卒業式になる。