「あー、よく寝た」

授業が終わると同時に、彼が大きく伸びをした。私は何も言わず、机の上を片付け始める。
身体の左側を緊張させ、耳だけをそちらに傾けながら。

「はぎわらさんってさ」

声が聞こえて、心臓がとくんっと跳ねる。

「あ、おぎわらさんだっけ?」
萩原(はぎわら)です」

前を見たまま、そう答える。

名前、覚えてくれたんだ。ちょっとあやふやだったけど。