「萩原さんはさ」

黙りこんでいた生野くんがつぶやく。

「好きな人、いるの?」

私は少し考えてから、生野くんの横顔に答える。

「うん。いるよ。片思いだけど」

私の声に、生野くんが小さく笑う。

「俺と同じだ」

うん、そうだね。

「つらいよなぁ、片思いって」

柔らかな風を受けながら、生野くんの声を聞く。

生野くんの想いも、私の想いも、届くことはない。
こんなに近くにいても、決して届くことはない。

そして、私が生野くんと屋上へ行ったのは、その日が最初で最後だった。