「涼子ちゃん、おめでとー」
「結婚式はいつ?」

大騒ぎになった教室の中、困ったように、でも幸せそうに微笑んでいる先生。
そんな先生をぼうっと見ていたら、小さな音を立てて、何かが落ちた。

「生野くん?」

私の足元に落ちたシャーペンを、生野くんが手を伸ばし拾っている。
だけど私には生野くんの顔が見えない。

「生野くん……」

もう一度その名前を呼ぶ。

けれどうつむいたままの生野くんに、私の声は届かなかった。