「んー、どうしようかなぁ。誰にも秘密の場所だからなぁ。でも、萩原さんにだったら、教えてあげてもいいかなぁ」

恥ずかしいのに、私は生野くんから目を離せない。生野くんは笑って、一本立てた指先を天井に向ける。

「この上」

ここは四階。その上ってことは。

「屋上?」
「そう。ここから見るより、もっと遠くまで景色が見えるんだ。誰もいないし。気持ちいいよ」

少し意外だった。もしかしたら女の子と待ち合わせでもして、一緒に食べてるのかな、なんて思っていたから。

「今度、萩原さんも一緒に行く?」

私は何も答えずに生野くんを見る。生野くんはそんな私にほんの少し笑いかける。

私たちの耳に、午後の授業が始まるチャイムが聞こえた。