第五話

「ジュード！　お前、一ヶ月も姿消して何やってたんだ！」
「一ヶ月……か」

さすがに数分後に帰還とはいかなかったが、百年相当の努力を積めたことを考えれば充分すぎる結果。

別の冒険者――獅子の亜人の女性が叫ぶ。
「なぁ、イーフェを知らないか！　あんたと同じ時期に消えたんだ！」

その女性はイーフェの仲間だった。

「イーフェなら、オークと戦ってるよ」
「！　やっぱり無事だった！　あぁクソッ、あんたもあとで説明してもらうからな！」
「あぁ、でも今は――」
「こいつらをぶっ飛ばすのが先だ」

直後、空を飛ぶドラゴンたちが、雷に打たれ、次々と墜落する。
「よくやったミニィ！」
イーフェパーティーの魔法使い、童女と見紛う小柄な少女によるものだ。
彼女の第二加護は『魔法連鎖』。放った魔法が周辺の個体に連鎖するように影響を及ぼす。

「あんたがブレスを防いでくれるなら、ドラゴンを一匹ずつ狩っていけばいい。いけるか！？」
「あぁ！」

獅子の亜人――ケープ含め、腕に覚えのある冒険者たちがドラゴンへ向かっていく。
ケープの第一加護『種族特性特化』は凄まじく、彼女の拳はドラゴンの鱗を破壊し、彼女の牙はドラゴンの喉笛を噛みちぎる。

ミニィの『魔法連鎖』の力も凄まじく、冒険者たちはどんどんドラゴンを討ち取っていく。
オークの群れは、イーフェが一人で蹂躙していた。

街壁を守る必要もなくなり、ジュードは一番近いドラゴンに向かって疾走。
第一加護『拳撃特化』によって強化された拳をドラゴンの鼻っ柱に叩き込み、一撃で倒す。

突如舞い戻った二人の冒険者によって、街崩壊の危機が救われた。
決着を実感した者たちが、大きな歓声を上げる。


イーフェと合流したジュードは、軽く拳を打ち合わせる。

――リーゼ、すぐに追いつくからな。

決意を新たにするジュード。
その横で、イーフェは焦り顔になっていた。

「ねぇジュード、ケープ怒ってた？」
「あー、まぁ」
「……一緒に怒られてくれるわよね？」

オークの群れを単騎で討伐する女傑も、仲間の怒りは恐ろしいようだ。
ジュードは軽く吹き出し、小さく頷く。