第一話

魔物の脅威に晒された世界。
神様に加護を与えられた一部の人間たちは己を鍛え、魔物との戦いに身を投じていた。
最初の加護を極めた者は、特別な儀式を経ることで第二の加護を授けられる。

ジュードは幼馴染のリーゼと共に幼少の頃より鍛錬を積み、魔物を統べる王を打倒すべく仲間を集め、ついに先日、第二加護を授けられるまでに至った。

だがそれから数日後。
ジュードは、仲間からパーティー脱退を促される。
彼のパーティーは五人構成。

金髪碧眼の少女リーゼはジュードの幼馴染であり、第一加護『全能力特化』第二加護『不死殺し』を持つ。あらゆる役目を自在にこなし、その圧倒的な強さから、世間では勇者と呼ばれている。

筋骨隆々の大男マグヌスはパーティーのタンクであり、第一加護『耐久力特化』第二加護『無敵時間』を持つ。第二加護によって、一分間あらゆるダメージを無効化できるようになった。再発動に必要な時間は五分。

中性的な容姿の青年ウェズは魔法使いであり、第一加護『攻撃魔法特化』第二加護『四重詠唱』を持つ。第二加護によって攻撃一回分の魔力で四発放つことが出来るようになった。

大人しい性格の少女エステルは白魔導士で、第一加護『治癒魔法特化』第二加護『蘇生魔法』を持つ。第二加護によって、死亡間もない者であれば生き返らせることが出来るようになった。

第二加護によって確実に強化された四人の仲間と異なり、ジュードの第二加護は俗に言う――ハズレだった。

黒髪黒目の青年ジュードはパーティーの前衛を務める拳闘家であり、第一加護『拳撃特化』第二加護『状態異常耐性』を持つ。

この第二加護、試したところ毒蛇の毒に僅かな抵抗を見せる、といった程度。
更には、この世界では『状態異常』への抵抗を強める装備が、教会にて寄付と引き換えに入手可能。

つまり、第二加護という強化のチャンスを、ジュードは無駄にしたのだ。

「俺たちは先へ行く。すまんがジュード、ここでお別れだ」

マグヌスの言葉に、ジュードは頷くことしかできなかった。


――だが、彼は諦めたわけではない。

数日後、リーゼたちが魔王討伐の旅に出発する日。
彼女がジュードに会いにきた。

リーゼは信じていた。ジュードが必ず、これまでの人生ずっとそうであったように、自分の隣に立ってくれることを。
ジュードもまた、そうするつもりでいた。
「待ってるから、なるべく早くね?」
「頑張るよ」
ジュードの答えを聞くと、彼女は一面の花畑にも負けない、美しい笑顔を浮かべるのだった。
「あんまり遅いと、先に魔王倒しちゃうかも」
「分かった分かった」
日常会話のような、気軽な言葉の応酬。

それを最後に、二人は別れる。

ジュードは彼女に追いつくべく、考えを巡らせる。
この世界で最も弱い『状態異常耐性』という加護を、ジュードは諦めていなかった。
第二加護を極め、必ずリーゼの隣に立つ。