「これから卒業生を送る会を始めます。」
五年生の挨拶でこの会は始まった。これから一年生から順に発表される。
「六年生のお兄さん、お姉さん!今までありがとうございました!」
毎年聞くフレーズだけど、自分が受け手になっただけで捉え方は随分違った。その後一、二年生はメッセージでその後の三年生以上はわたしたちと同様に合唱だった。同じ合唱でも学年ごとにレベルが全然違ってこんなにも数年で変化があるのかと驚いた。
「では最後に、六年生の皆さんお願いします」
ついに私たちの番だ。それぞれ位置について指揮者とアイコンタクトをとる。途端、一気に緊張が増してきて手がぶるぶる震えてくる。
最初の音なんだっけ?
一番初めの音をど忘れしてしまったのだ。左手は何とか思い出したものの、右手が全然思い出せない。指揮者も、みんなも顔は見ていないから分からないけれど遅くないかと思っているはず。
思い出せ!お願い!
それで…思い出すことができた。
その後音を外してしまうことも、間違えることもなくて結果オーライだった。
体育館は大きな拍手で包まれ成功で終われた。
「みんな良かったぞ!今までで一番の出来だったよ」
「やったー!」
口々に、「良かった」とか「最高だったね」と言い合っている。
「華花ちゃんも上手だったよ!」
多くの子にそんなことを言われて私も最後にやれて良かったと朗らかな気持ちになった。


そんなこんなでもう、あと三日後には卒業する私たち。せめてもの思い出作りとして先生はみんなで何かしようと言ってくれた。
話し合った結果、プロフィール帳とランキングをみんなで作ろうということになった。ランキングとはいわゆる「将来芸人になっていそうな人」や「お金持ちになっていそうな人」などをクラスの中から誰が一番それにあっているかを投票で決めるというもの。それに載った人は嬉しいものだが乗らなかった人は少し残念な気持ちになってしまうものだけど一度やってみたかったもので楽しみにしている。プロフィール帳を作るというのは、その名の通り自己紹介の様な物をクラス全員分書いて残しておこうという物だ。
もうみんなで書いたから、あとは先生が印刷してくれるのを待つのみ。卒業前にこんなにいろんなことを計画してくれるなんて、すごく嬉しい。今までやってきた甲斐があった。
実は、それ以外でも先生はたくさんのことを私たちのために計画してくれていて先生得意の学活ではスライドショーの様な物を作ってくれた。今まで先生が撮ってきた写真を卒業らしいBGMと一緒に流した。自分の事故画がはいっていないか心底不安になったけどはいっていなくて安心した。先生の性格が出ていたのか時々ボケも入ってきて私も一緒に笑うつもりだった。でも、私は笑うことができなかった。なぜなら笑いの代わりに私の目からは涙が溢れていたから。BGMを聴いていたら今までのことを思い出し、この六年間の中で今年は特別で楽しかったと自信を持って言える一年だったと感じる。私の他にも泣いている子は何人かいて、スライドショーが終わるとお互いに慰め合っていた。
私は、中学からみんなと違う道を歩く。だからこそこの一年は全体に忘れないと心に誓った。
そのあとは、給食で運悪く放送当番で涙は収まっても声が治らなくて涙声になってしまったことを家に帰ったら弟に指摘された。

明日は、卒業式。
いっぱい泣いて、いっぱい笑おう。