顧問の先生から聞いた風習に従って、「七月七日の夜明けの晩」に間にあうように、つまり七月六日の夜に私はこっそりと自分の部屋のベランダに短冊を飾った。
 ベランダから見上げた空は、運よく雲もなく星が一面に光る奇麗な夜空だった。このたくさんの星の中で天の川はいったいどのあたりにあるのだろうか。普段はあんまり星空なんて見上げないからよく分からなかった。わずかに夜風が吹き抜けて、吊るした短冊をゆらゆらと揺らしている。短冊に書いた願い事は「どうか手芸が上手くなりますように」だった。

 ……うん。どれだけ落ち込んでも、これを願えるくらいには、どうやら私は手芸が好きらしい。

 もうちょっとだけ、頑張ってみようかな。鞄からそっと取り出した吉田先輩の手芸作品(たからもの)を見つめて、私はそう決意した。