針仕事の上達かぁ……。私は今日の部活での出来事を思い出して少し憂鬱だった。私が手芸部に入部する、と宣言したとき、私のことを良く知っている友達はみんなびっくりしていた。それはそうだと思う。だって私は制服のネクタイもいまだに上手く結べなくてお母さんにやってもらっているし、靴ひもを結ぶのだってもたもたと十五分以上もかけてしまうくらいには手先が不器用なのだ。だから私も自分が手芸に向いていないことは身に染みて分かっていたけれど、それでも中学に入ってすぐの部活紹介の時に見た先輩たちの作品はどれもがとても可愛くて、私もこんなものが作りたい、と本気で思ったのだ。

 でも今日の部活で発表された手芸コンクールの入賞作品は、普段あんまり部活には来なくて、手芸部に入った理由も「なんか楽そうだったから」なんてこっそり言っていた沙織ちゃんの作品だった。

 確かに沙織ちゃんは手先がとても器用だった。ひとつひとつの作業の飲み込みも早いから作品を作るスピードもすごく早くて、だからさっさと課題の作品を仕上げてすぐに帰ってしまう。一方の私は一つ作品を仕上げるのに何度も何度もやり直しをしなくてはならず、針を刺しすぎてしまってぼろぼろになった布を仕方なく取り替えたこともあるくらいだった。
 そんな私に対しても、先輩たちは苛立つこともなく優しく丁寧に作業を教えてくれた。すごく時間はかかってしまったし、良い出来だなんて言えないけれど、しょっちゅう指に針を刺しちゃって絆創膏だらけの手で初めて作品を作り上げた時、私はとても嬉しかったのだ。

 ……でも、結果は全然ダメだった。