一気にテンションが盛り上がり、顔がニヤケる。


それを必死に隠しながら、ゆっくりとフェンスの向こうの彼女に近づいた。


「今日は花柄なんだね」


俺が言うと、彼女は小さく頷いた。


白いワンピースじゃなくて、クリーム色をした花柄のワンピースだったのだ。


「今日はオシャレをして来ました」


照れくさそうに言う彼女に俺の心臓はドキンッとはねる。


お……おしゃれ?


そ、それってもしかして……俺に会うから……?


そう思ってみて、慌てて否定する。


そんな事、あるワケがない。


あの歌姫だぞ?


俺なんか到底手の届かない存在だ。


こうして話をしているのは、ただの偶然が引き起こした奇跡なんだ。


どちらかが退院すると、もう二度とない事なんだ。


「どうしました?」


「い、いや、別に……」


「でも、顔が赤いですよ?」


フェンスの網の間から、細い彼女の手が俺の頬に触れる。